2023年4月5日

デザイン業界の標準的な見積もり方法と、正しい発注先選び

「デザイン業界の見積りって何を基準にどうやって決められているの?」と謎に感じられておられるクライアント様も多いのではないかと思い、この記事では業界を渡り歩いてきたデザイナーが自らのリアルな経験をもとに、見積もり方法とそこから導き出す正しい発注先の選び方などを解説いたします。


こんにちは、アドラクションの伏見と申します。
わたしは独立するまでに、複数の制作会社を渡り歩いてきました。
会社によっては営業メンバーと制作メンバーではっきりと業務を分けており、デザイナーは見積もりの作成には関わらないケースが多く見られましたが、中には見積もり作成をデザイナーが兼任するケースも見られました。わたしも一定のキャリアを超えた頃、デザインの制作も見積もりも一任されている時期がありました。
そこでまずはその経験から得た、デザインの見積もり方法についてのお話を書きたいと思います。

なぜ今回、このお話を書きたいと思ったかというと、お客さんから「WEBサイトっていくらで制作できるの?」とか「パンフレットの場合は?」などのご質問をいただくことがありますがその際、はっきりとその場で〇〇万円です!とお答えしたいもののなかなか難しくてざっくりとした答えになってしまうことが多く、それが申し訳なく思うことがあったのと、多くのデザイン制作企業のホームページなどにおいて、制作の具体的な金額が載っておらず「詳しくはご相談ください」的な文言が書いてあるケースが多く見られますが、それらがなぜなのか?ということも併せてご理解いただくためのご説明を、どこかに用意したいと思っていたからです。

そのような内容をお伝えするこの記事をおすすめしたい方は、以下にあてはまる方です。

  • ●WEBサイトや印刷物のデザイン制作を外部に発注する際に役立つ知識を得たいと思っている方
  • ●現在、外部にデザインを発注しているけど、費用感がどういうふうに決まっているかがよく分かっていない
  • ●費用感の決まり方を知って、デザイン制作の適正な料金を見極められるようになりたいと思っている方

上記のいずれかに当てはまる方はこのページを読んでいただく意味がありますので、ぜひ最後まで見てください。
それでは本題に入っていきましょう。


“人日”という単位で試算されるのがスタンダード。

まず結論からお伝えしますと、デザイン費用の決まり方は工数をベースとし、「人日」という単位を基準に試算されることが多いです。
この“人日計算”と呼ばれる試算方法は、『その制作物を作成するのに何人が関わって、それぞれが何日の労力をかけることでお客様に納品することができるのか』という意味になり、以下の図のようになります。

人日という試算方法について、お分かりいただけたでしょうか。
まずはこの人日という単位でどれくらいの人と労力が必要な案件であるかを試算し、そこに「1日あたりの金額」をかけた費用がお見積もりの基本金額となります。
この「1日あたりの金額」については、企業によって異なるのですが、ここでは仮に40,000円という設定で計算してみましょう。

上記の1人日40,000円の企業の場合、スタッフの時給で換算してみると5,000円となります。当然、この1人日あたりの金額は優秀なスタッフがいる会社ほど時給換算も高くなっていくため、高額になる傾向が高いです。

ちなみに複数の制作会社で見積もり作成をしていた経験から費用感についてお話しますと、だいたい1人日24,000円〜60,000円ぐらいに設定している会社が多いと感じました。

24,000円(時給3,000円)〜30,000円(時給3,750円)の会社は安い部類と言えます。
30,000円以上〜40,000円(時給5,000円)の会社は平均的、
40,000円以上〜60,000円(時給7,500円)の会社は高い部類、
60,000円〜の会社は名の知れた企業の部類となり、高くなればなるほど優秀なクリエイターやエンジニアに対応してもらえるというのがわたしが持っている業界の費用イメージです。

例として10人日の工数で納品できる比較的小規模なWEB制作案件を想定し、費用感に差がある3社に発注した場合の制作金額を比較してみましょう。

シンプルに試算すると、こうした費用になります。
ただし、これはあくまで人件費だけの試算になりますので実際には、ここに制作の際に発生した交通費や制作に必要な素材の購入費用など、その他の必要経費がプラスされて最終的な金額が決定します。

というわけで、ここまでのお話をもとに相見積もりを取られる際には、「御社では見積もりの人日試算はいくらに設定されているでしょうか?」と確認いただければ、比較がしやすくなると思います。現場では実際に、そのような会話が飛び交っておりました。

ちなみに当記事は見積もりの試算方法に関する記事ですが、2023年5月現在のホームページ作成費用の相場を知りたい方は、以下のサイトが参考になると思います。

<WEB幹事>
ウェブデザインにかかる費用は?ホームページ制作の料金相場を解説【ページ別・種類別】


なにを優先したいかで、発注する企業を検討しましょう


ここまででデザイン料金の試算方法はお分かりいただけたと思います。
ここからは、それらを踏まえて失敗しない発注先企業の決め方について書いていきたいと思います。

結論、発注先企業はご予算と優先事項で決めるべきだと思います。
ここまででお話したように、デザイン制作の金額というのは多くの割合が人件費となります。ですので、どんなタイプのデザイナー・クリエイターに作ってもらいたいか?を考える必要があります。
例えばホームページ制作を例に考えてみると、「しっかりとしたブランドイメージを感じさせるサイトにしたい」という方であれば、高いデザインスキルを持つデザイナーやデザインチームでないと実現が難しい案件となりますので、ある程度見積もりが高めの企業の方が安心でしょう。
見積もりが安い企業の場合、手間をかけずに作成するか、キャリアの浅いスタッフにデザインをまかせるかの選択肢になりますので、デザイン性にこだわる場合は失敗する可能性が高いと思います。

ただ、「起業したばかりでまずはカタチだけで良いので簡単なホームページがほしい」という方であれば、とにかく安い企業を探して発注する方向で良いと思います。逆に、高い企業に発注する必要はありません。
例えば企業ではなく、ランサーズやクラウドワークス・ココナラといったクラウドソーシングを利用し、フリーランスのクリエイターに発注するのも良いかもしれません。ここには、時給1,000円~2,000円という価格で対応してくれるフリーランスの方もおられ、システムの仲介手数料を支払う必要はありますが、人によっては人日でいうところの20,000円以下での発注が可能でしょう。良いクリエイターが見つけられれば、安い割にはクオリティが高いものを期待できるかもしれません。

体感的には、高い会社にはやはり高い理由がある

さて、ここまで発注先企業の決め方について書きましたがこれを頭に入れたとしても、企業選びはやっぱり難しいと思います。そこで違う切り口からのお話をもうひとつ。
わたしは人日費用が30,000円の会社(以下A社とします)と60,000円の会社(以下B社とします)の両方の制作会社にデザイナーとして働いていたことがあるのですが、両社を見比べてどれくらいクリエイティブやサービスの質に違いがあったか?ということを思い返してみたのですが、そこには実際に一定の差を感じていました。
というのは、A社は品質にばらつきが出ていた印象があったのですが、B社はそれがあまりない印象でした。
A社ももちろん一定水準のアウトプットを出していた印象がありますが、体制的には経験の浅い若手がデザインする場合もあり、それをベテランがフォローするものの状況によってはクオリティコントロールが効きにくいケースもあり、品質にムラができてしまっていた一方で、B社はベテランのデザインをベテランがチェックするという手堅い体制により、どのような状況下においても高水準のアウトプットを維持していたイメージです。
そのため、両社の価格は妥当であるというのが結論で、世の中うまいバランスになっているものだなと、この記事を書いていて思ったのでした。

アドラクションでは人日試算を基準とした透明性のあるお見積もりをご提示いたします。

ちなみにアドラクションでは4万円/人日を基準に、4人日以降分は1日につき1万円のディスカウントをさせていただくかたちでお見積もりを試算しております。

  • ●例1:工数3人日の案件
    4(万円)×3(日)=12万円(税別)
  • ●例2:工数6人日の案件
    4(万円)×6(日)-3(万円ディスカウント)=21万円(税別)
  • ●例3:工数10人日の案件
    4(万円)×10(日)-7(万円ディスカウント)=33万円(税別)

お見積もりはお客様のご希望の制作プラン(デザインテイストや仕様・ページ数など)に合わせて試算させていただくのはもちろんのこと、ご希望の予算をお聞かせいただいてその金額の範囲で最適化した制作プランをご提示させていただくことも可能ですので、お気軽にご相談くださいませ。