2022年6月27日

デザイン業界の標準的な見積もり方法と、正しい発注先選び



こんにちは、個人デザイン事務所 アドラクションの伏見と申します。
わたしは、フリーランスの個人事務所として独立するまでに、15年ほどのあいだで数々のデザイン制作企業を渡り歩いてきました。ここで言うデザイン制作企業というのは、規模感や運営形態によって呼称は異なりますが、いわゆる「デザイン制作会社」「デザイン事務所」と呼ばれる企業を指します。

企業によっては営業メンバーと制作メンバーではっきりと業務を分けており、デザイナーは見積もりの作成には関わらないところもありますが、企業のスタイルによってはどちらもデザイナーが担当するケースもあります。わたしの場合も一定のキャリアを超えたあたりからデザインの制作も見積もりも一任されるようになっていきました。そこでその経験から得た、デザインの見積もり方法についてのお話を書きたいと思います。

なぜ今回、このお話を書きたいと思ったかと言いますと、お客さんから「WEBサイトっていくらで制作できるの?」とか「パンフレットの場合は?」などのご質問をいただくことがありますがその際、はっきりとその場で〇〇万円です!とお答えしたいものの実際は難しく、申し訳なく思うことが多々ございます。

多くのデザイン制作企業のホームページにおいて、制作の具体的な金額が載っておらず「詳しくはご相談ください」的な文言が書いてあるケースが多く見られますが、それらがなぜなのか?ということも併せてご理解いただくためのご説明を、常々用意したいと思っていたからです。

そのような内容がご理解いただけるであろうこの話をおすすめしたい方は、以下にあてはまる方です。

●WEBサイトや印刷物のデザイン制作を外部に発注する際に役立つ知識を得たいと思っている方

●現在、外部にデザインを発注しているけど、費用感がどういうふうに決まっているかがよく分かっていない方

●費用感の決まり方を知って、デザイン制作の適正な料金を見極められるようになりたいと思っている方

上記のいずれかに当てはまる方はこのページを読んでいただく意味がありますので、ぜひ最後まで見てください。
それでは本題に入っていきましょう。


この人日計算と呼ばれる試算方法は、『その制作物を作成するのに何人が関わって、それぞれが何日(時間)の労力をかけることでお客様に納品することができたか』という意味になり、以下の図のようになります。

人日という試算方法について、お分かりいただけたでしょうか。まずはこの人日という単位でどれくらいの人と作業(工数)が必要な案件であるかを試算し、そこに「1日あたりの金額」をかけた費用がお見積もりの基本金額となります。
この「1日あたりの金額」については、当然ですが発注先によって異なります。ここでは仮に、これが40,000円という設定で計算してみましょう。

上記の1人日40,000円の会社の場合、スタッフの時給で換算してみると5,000円となります。当然、この1人日あたりの金額は優秀なスタッフがいる会社ほど時給換算も高くなっていくため、高額になる傾向が高いです。

ちなみに複数の制作会社で見積もり作成をしていた経験からの費用感についてお話しますと、だいたい1人日24,000円〜60,000円ぐらいに設定している会社が多いと感じました。
24,000円(時給3,000円)〜30,000円(時給3,750円)の会社は安い部類と言えます。
30,000円以上〜40,000円(時給5,000円)の会社は平均的
40,000円以上〜60,000円(時給7,500円)の会社は高い部類
60,000円〜の会社は名の知れた企業の部類となり、
高くなればなるほど、優秀なクリエイターやエンジニアによる対応となるでしょう。

例として10人日の工数で納品できる比較的小規模なWEB制作案件を想定し、費用感に差がある3社に発注した場合の制作金額を比較してみましょう。

すごくシンプルに試算すると、こうした費用になります。ただし、これはあくまで基本的な人件費だけの試算になりますので実際には、ここに制作の際に発生した交通費や素材の購入費用など、その他の必要経費がプラスされて最終的な金額が決定します。

というわけで、ここまでのお話をもとにしてデザイン制作企業の相見積もりなどを取られる際には、「御社では見積もりの人日試算はいくらに設定されているでしょうか?」と確認いただければ、比較がしやすくなる要素となると思います。現場では実際に、そのような会話が飛び交っておりました。

ちなみに当記事は見積もりの試算方法に関する記事ですが、2022年現在のホームページ作成費用の相場を知りたい方は、以下のサイトが参考になると思います。

アイミツ ホームページ作成費用と相場|料金早見表つき【2022年保存版】
https://imitsu.jp/cost/hp-design/

WEBサイト制作現場のログ ホームページ制作 費用・料金の相場一覧【2022年改訂版】
https://www.lab-ry-works.com/blog/?p=243


ここまででデザイン料金の試算方法はお分かりいただけたと思います。ここからは、それらを踏まえて失敗しない発注先企業の決め方について書いていきたいと思います。

結論、発注先企業はご予算と優先事項で決めるべきだと思います。ここまでのお話でご理解いただけたように、デザイン制作の金額というのは多くの割合が人件費となります。ですので、どんなタイプのデザイナー・クリエイターに作ってもらいたいか?を考える必要があります。

例えばホームページ制作を例に考えてみると、「信頼性を感じさせるしっかりとしたブランドイメージを感じさせるサイトにしたい」という方であれば、高いデザインスキルを持つデザイナーやデザインチームでないと実現が難しい案件となりますので、ある程度見積もりが高めの企業の方が安心でしょう。

見積もりが安い企業の場合、手間をかけずに作成するか、キャリアの浅いスタッフにデザインさせるかの選択肢になりますので、デザイン性にこだわる場合は失敗する可能性が高いと思います。

ただ、「起業したばかりでまずはカタチだけで良いので簡単なホームページがほしい」という方であれば、とにかく安い企業を探して発注する方向で良いと思います。逆に、高い企業に発注する必要はありません。
例えば企業ではなく、ランサーズやクラウドワークス・ココナラといったクラウドソーシングを利用し、フリーランスのクリエイターに発注するのも良いかもしれません。ここには、時給1,000円~2,000円という価格で対応してくれるフリーランスの方が多くおられ、システムの仲介手数料を支払う必要はありますが、人によっては人日でいうところの20,000円以下での発注が可能でしょう。良いクリエイターが見つけられれば、安い割にはクオリティが高いものを期待できるかもしれません。


さて、ここまで発注先企業の決め方について書きましたがこれを頭に入れたとしても、企業選びはやっぱり難しいと思います。そこで違う切り口からのお話をもうひとつ。わたしは、先ほどの人日費用が30,000円と60,000円の、金額に大きく差がある両方の制作会社にデザイナーとして働いていたことがあります。
ちなみに時系列で言いますとキャリア8年目あたりで在籍していたのが30,000円の会社(以下A社とする)で、その後のキャリア14年目あたりで在籍していたのが60,000円の会社(以下B社とする)となります。キャリアアップとして高い会社の方に転職したので、デザイナーとしてのスキルはB社の時の方が高い状態であったと言えます。
ここで、デザイナーとしてお客様に2倍の差があるそれぞれの金額に見合ったパフォーマンスが提供できていたか?ということを本音で書いてみたいと思います。

答えは、「自信が発揮しているパフォーマンスに差は感じていなかった」です。(デザインの質だけでなくそれが生み出したマーケティング成果も含めての判断です。)

人日費用はこの例で言いますと2倍の差があるわけですが、実際のアウトプットは企業の先にいる、担当デザイナーのスキルやモチベーションによって大きく変化します。優れたデザイナーに当たって大成功するときもあれば、失敗することもあるのが現実だと思います。
A社の後期にはキャリアも10年を超えていたので一定のクオリティをご提供できる状態であったと感じており、B社在籍時のほうがそれよりもキャリアが高まっていたと考えても、2倍の価値まではいかなかったと感じます。かなり感覚的なお話にはなりますが、お客様へご提供できた価値を多角的に判断しての感想です。

ただ、A社とB社の違いとして大きく感じていたことがあります。
それは、A社は在籍しているデザイナーのスキルやチェック体制に大きくばらつきがあったが、B社はスキルもチェック体制もかなりの強固であったことです。

●A社:キャリア1年未満〜10年ぐらいのデザイナーが在籍し、若手をベテランがチェックする体制

●B社:キャリア10年以上のデザイナーのみが在籍し、ベテランがベテランのデザインをチェックする体制

A社ももちろん、高いアウトプットを出していた印象もありますが、クオリティにムラがあるというか、当たり外れを生んでしまっているところがあったと感じている一方で、B社は高水準のアウトプットを必ず出していたイメージです。そのため、両社の価格は妥当であるというのが結論で、世の中うまいバランスになっているものだなと、この記事を書いていて思ったのでした。




そんな2社を経ての現在。わたしはアドラクションという屋号のもと、フリーランスデザイナーとしてご飯を食べています。制作においては基本、わたしがデザイン・ディレクションのすべてを一人でおこなうスタイルで、一人でできない作業は外部のパートナーとチームを作ることでご対応させてもらっており、“一流制作会社のクオリティを、フリーランス価格で”ご提供することをモットーとし、日々実践しております。

費用のほうは、3〜4万円/人日でお見積もりを試算(必要工数によって変動)させていただいております。

工数3人日以上の案件:3万円/人日で試算

工数3人日未満の案件:4万円/人日で試算

お見積もりはお客様のご希望の制作プラン(デザインテイストや仕様・ページ数など)に合わせて試算させていただくのはもちろんのこと、ご希望の予算をお聞かせいただいてその金額の範囲で最適化した制作プランをご提示させていただくことも可能ですので、お気軽にご相談くださいませ。

それではここまで読んでいただきありがとうございました!

大阪生まれ大阪育ちのフリーランスデザイナー。(日本グラフィックデザイナー協会 正会員)
アドラクションという屋号で個人デザイン事務所として活躍しております。
趣味は、野球観戦・犬の散歩・お笑い。